第三章 ストリートライブ


中1の誕生日に、自分用の8000円のアコースティックギターを買ってもらった。
ついに新品の自分のギターだったから、凄い嬉しかった。
当時、性同一性障害の事で、色々いじめに逢ってたけど、学校が終わってすぐ家に帰って、ずっと練習してた。
だから、そんな嫌な事はすぐに忘れられた。
むしろ作詞の課題になっていい経験をしたと思う。


何曲か曲が完成した時、俺は、無謀な事を考えた。
「ストリートライブ」だった。
前使っていたギターは古臭くて人に見せられる物ではなかったけど、新品を買ったから。
でも、勿論、そんなの今の自分には無理だった。
だから、それを気取ろうと、家のマンションの階段の所で座り込んで歌ってみた。
階段って言っても、家は通学路の途中にあるから様々な同じ学校の人が通った。
やっぱり恥ずかしかったけど、それでも自分なりに毎日弾き続けた。
誰かに見せるつもりじゃなく、家以外の所で歌ってみたかったという夢が叶った。


ストリートライブ気取りを始めて一週間程。
ある一人の人が俺の方に寄って来た。
クラスメイトのカナちゃんだった。
カナちゃんとは、特別仲が良い訳でも悪い訳でもなかった。
でも、家が近いらしく、毎日俺の弾いている前を通っていたのは、俺でも気づいた。
「私に聴かせて」普段はおちゃらけた感じのカナちゃんが、一言、俺に言ってきた。
「いいよ」俺も笑って答えた。
そうやって、何曲か自作じゃない歌を弾き語った。
その時歌ったスピッツの「チェリー」はカナちゃんも大好きの歌のようだった。
「上手いねぇ」やっぱり、友達からの感想は嬉しかった。
2〜3曲歌ったら、カナちゃんが一言言ってきた。
「ねえ、ミドリちゃんの作った歌聴きたい」
俺はクラス内で自分で曲を作った事を言いふらしていた為、カナちゃんは知っていたようだ。
「聴きたい?」「うん」「じゃあ、一曲だけ」照れながら、一本指を立て、俺はそう言った。


そして、俺は一曲のある歌を歌い始めた。


2005.09.15




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